サンシャイン通りのデニーズはヤケに浮世離れしている。

今夜もその前を通りすがろうとした時、見た目に明らかに出会い系喫茶で買った男と売った女の子がその階段を下りてくる。
早く済ませてしまおうという気持ちがそのベースにあるのか、無言で先を歩きロクに振り返らない派手な色で固めた女の子の後ろで、年齢の解りにくい会社員風の男がベラベラと何かを喋り続けている。

そんな世界の片鱗を少し覗いてみたくなって、これからどこかに向かう前に食べておこうかという感じの魅力的な若い二人の女の子たちに続いて、その階段を上っていった。

私のような『お一人様』が第一の目的として装う(本当はお腹がすいたから来ているのだ)のは読書がしたくてという言い訳。

東池袋のフレッシュネスバーガーで、いつも同じ席でタバコ吸って日光を浴びている短髪の女性が必ず本を手にしているのと同じだ。

アントニオ・ガウディの遺作(未完成だが)であるあの教会の石工のひとりに実は日本人がいて、ものすごく重要な役割を果たしているという事実を手に取って初めて知ったこの本。

75cmの倍数の仕掛けや聖書が示す神と人間の関係や物語性の彫刻表現、リサイクル建築である一面や壮大な楽器としての構造を孕んだ設計思想、『逆さ吊り実験』による重力に従順な構造計算・・・本当に驚くべき記述、枚挙にいとまがない。

豚肉のグリルや冷たいスープと共に文章を味わいつつ、左右を通り過ぎる客の『ジャンル決め遊び』をもまた楽しんだ。

黒いロリータ衣装の女の子を連れた、洗練された韓国のオタクみたいな髪型をした青年。

僕と同じようなお一人様の30代OL、30代サラリーマン。

何をしに来ているのか全くわからない、いつまでも帰ろうとしない大学生の男女5人組。

今度は待ち合わせて合流して、そそくさと出て行く二人。

もっと面白いのは風邪をひいて具合が悪いから失敗ばかりいているウェイトレスとその同僚とのやり取り・・・

まぁ、そんなこんなで時間はあっという間に過ぎて、そろそろ帰る時間だ。

こんな時間になると電車で隣に座る人はみな、速度変化に応じてこちらに寄りかかってくる。

(たぶん)キレイなお姉さんの細い二の腕に押されながら、自分も眠りについていたことに気付いて目が覚める。

あぁ、そうだ、駅にはまだごみ箱が無いままなんだ。

捨ててしまおうかどうしようか迷ったmetro min.を片手に自転車に乗った。

コメント

ベビーオイル
ベビーオイル
2008年6月20日12:20

私も近所のデニーズ、よく利用します。
夜中に女友達と待ち合わせして、手芸をした時もありました。
でもあの場所は「人間ウォッチング」に最適ですよね。
近所だと知ってる顔も多いのですが、
夜中だと見てはいけないシーンも多く、ちょっと楽しかったりします(笑

affogato
affogato
2008年6月21日1:57

ベビーさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
夜だからといって常にお酒が飲みたくなるわけではないので、地球にやさしいかどうかは別としてデニーズは便利ですね。
周りの人が色々と気になるぶん、じゃあ自分はどういう風に見られているのだろう、っていうのもありますけどね。

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